流し読み

俺にまつわるエトセトラ

2022-01-01から1年間の記事一覧

青空

あれは、一度目のフリーター時代の、夏のことである。いい加減に正社員として就職しようと重い腰を上げ、いくつかの求人に応募するも当然ながら書類落ちし、落ち込んでいたある日だった。幸運にも、とある清掃会社の面接に合格し、体験入社をした上で入るか…

サツキマスのいた川

『サツキマスのいた川』という絵本を、皆さんは読んだことがあるだろうか。 サツキマスのいた川 (写真でつづる自然と人の物語) 草土文化 Amazon 昔、俺が通っていた小学校の図書室に、この本は置いてあった。絵本というより、正確には写真集かもしれない。初…

華金の夜

仕事帰り いつもの道を一人歩く 信号待ち 白い息に笑顔のカップル 照れ笑いして 手を握り合う 窓ガラス 結露の向こうに一家団欒 笑い声と カレーの香り 眼鏡の曇り わざと拭わず マスクの下で 唇を噛む

初恋

小学校へ入学した頃のことでした。たまたま隣の席になった、ユミちゃんという女の子がいました。ユミちゃんはいつもニコニコとしていて、愛嬌のある女の子でした。ユミちゃんは僕に名前を尋ね、そして「友達になろう」と言いました。僕は当時から、背は高く…

零細IT企業物語

桜の木が花びらを散らし、春の暖かい日差しが徐々に強さを増してきた初夏、俺は会社を辞めた。僅かな期間の勤務だったが、非常に濃密な時間だった。この「濃密」というのは、もちろん悪い意味で、ということである。あらゆる悪意、例えば軽蔑、嫉妬、欺瞞、…