流し読み

どうでもいいこと

サツキマスのいた川

サツキマスのいた川』という絵本を、皆さんは読んだことがあるだろうか。

昔、俺が通っていた小学校の図書室に、この本は置いてあった。絵本というより、正確には写真集かもしれない。初版は1991年、作者は田口茂男さんである。
初めて読んだのは、もう15年以上前のことだと思う。だが、一度読んだら忘れられない、魅力的で、そして物悲しい本だ。
主人公の「ぼく」は、亡くなった祖父の形見として、20年前に発行された鉄道の切符、手書きの地図二枚、そして「この手紙はかならず旅から帰ったあとで読むこと」と書かれた封筒をもらう。やがて夏休みが来て、「ぼく」は切符の行き先に書かれた、長良川の流れる岐阜県郡上八幡を目指して旅に出る。そこから、一夏の不思議な冒険が始まるのだ。
美しい長良川、水遊びを楽しむ子供たち、そして力強く泳ぎ回るサツキマスの群れ…。日本の原風景を色濃く残す郡上八幡の町に「ぼく」はすっかり魅せられ、宝物のような夏の日々を過ごす。しかし、旅から帰った「ぼく」が祖父の手紙を読んでみると─────。結末は語らないが、あえてヒントを出すならば、この本のタイトルは『サツキマスの"いた"川』だ、ということだろう。

俺自身も長良川郡上八幡へ行ったことがある。風光明媚な水の都で、長良川は美しかった。だが、昔を知っている方からすれば、今の長良川は見られたものではないのかもしれない。そして、そんな川ですら己の身で体験することもなく生活する子供たちが、日本中に沢山いる。無理もないことだと思うし、今更自然に帰るべきだとも思わない。ただ、そこはかとない悲しみを覚えるだけだ。
俺の住む街にも、川がある。秋になると、鮭が海から遡上してくる。それを川へ見に行くのが、毎年の楽しみだ。ずっとこんな秋が続いてほしいと願っているが、一方で今の便利な暮らしが環境を汚すことを知りつつ、それを今更やめられない。

似たような話の絵本に、『ワンプのほし』がある。

ワンプたちが平和に暮らす星に、ある日突然やってきた「バッチィ人」なる宇宙人が、便利だけれど星を汚し尽くす暮らしを続け、最後には掃除もせずにワンプの星を出て行ってしまう、という話だ。バッチィ人は最後にはいなくなるが、ワンプの星が元に戻ることは、もう二度とない。

この記事を書くために、久しぶりに『サツキマスのいた川』を読んだ。31年前に出された本とは思えないほど、写真は美しく、そして、結末はやっぱり物悲しかった。